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Eisen's Corner
コラム編
An Inconvenient Truth (不都合な真実)
2007.01.12

長いフライトの場合、機内に入ったらすぐ、私は此れから行く国の時間に時計、体調を合わせることにしている。それには食事の量をある程度制限し、旨い酒を飲み、リラックスしてよく眠ることである。私にはそれがジェットラグを短時間に克服する最良の方法である。

しかし先日JALに乗った時、その習慣が珍しく守れなかった。何か映画を見ようとチャンネルを回すと何処かで見た顔があり、熱心に語りかけていた。誰だろう?丹精な顔立ち、押し出しは立派で堂々としている。しかし硬い話の様であった。リラックスする為にはいささか相応しくない。すぐ他のチャンネルで映画を見た。その映画が終わり、もう寝たいと思ったが未だ眠くならない。再度コニャックを注文し、チャンネルを回した。先程の男が未だ話している。多くの聴衆を前に、原稿も無しに淀みなく語りかけている。長いな、それにしても誰だろう。どこかの大学教授? 

映像は地球の各地の様々な状態を映し出している。プログラムを見たらAn Inconvenient Truthとあった。便利ではない真実? 意味不明。好ましからざる事実?いや事実ならFactのはず。やはり好ましからざる真実か? 何だろう。しかし薄暗い中で小さい英字の説明文がメガネ無しでは読めなかった。

仕方無しにしばらく見ていることにした。地球温暖化についての話であった。この話は問題点も対策も殆ど知っているとTVのSWを切りかけたが、画面は詳細なデータ、グラフを示していた。それにしても話がうまい。しかもありとあらゆる情報を駆使して理路整然と地球温暖化の現状、問題点を説明している。俳優の様な甘いマスクの説明者が、である。今迄周囲に物知り顔に温暖化の問題点を話していた自分が恥ずかしくなる位に内容は素晴らしかった。 全く知らなかった温暖化問題の全体像が見えて来た。そして1時間半以上も見る事になってしまった。最後になって、プレゼンターの名前が出て来た。Former US Vice President AL Gore とあった。米国のゴア元副大統領だったのである。どうりで何処かで見た顔である。2000年にブッシュ現大統領との選挙に破れた後、地球温暖化対策に情熱を注ぎ、全世界に訴える講演活動をずっとしていたのである。頭をがーんと殴られた気がした。

米国は、京都議定書の批准もしていない。にも関わらずと言うか、だからと言うべきか、地球温暖化の問題を調べ上げ、全世界で1200回もの講演会をして回っていた。番組はそのドキュメンタリーのノーカット版であった。道理で原稿はいらない筈である。しかし講演の前にはホテルの自室で毎回、その国、その都市、そして来場する聴衆 に最も相応しい内容にプレゼン原稿を変更する等の様々な努力をしているとの話であった。日本にこの様な政治家が今迄いたであろうか。日本の場合ごく少数の例外を除き、政治家の殆どは派閥力学の中で揺れ揺られながら、族議員となり、大臣、知事となり、地元の有権者の利益、自分の派閥の各種の権益を守る為、私利私欲の為に動いている。そして政治家の不祥事が続いている。日本の政治家に爪の垢でも煎じて飲ませたいものである。

温暖化がこれ以上進むと幾つかの島や都市、国が水没する危機が想定されている。日本でさえ、多くの海岸線が変わり、場合によっては環境難民が発生する可能性さえ言われている。しかし、この種の問題でも解決策を全世界でシェアーすることは難しい。何故か?それは温暖化が全世界で同じ様に悪さをする訳ではなく、逆に良いとする国や人々もいる可能性があるからである。北に位置する国はどこの国でも暖かい南方を羨み、過去の歴史では常に南方化政策を取ってきている。南の幾つかの島、都市が沈むとしても温暖化で自国の気候が良くなる方が望ましいと思う場合もあろう。故に温暖化大いに結構と思うかも知れない。又、発展途上国は温暖化は先進国の責任で自分達の発展をそこなう温暖化防止は賛成出来ないと言っている。この様に温暖化対策と言ってもはそう簡単ではない。全世界の合意を得る為には、温暖化により全世界に何が起こるかを真剣に調査し、全てのシュミレーションを行い、どの国にとっても好ましくない結果となることを明確にしなくてはならない。

歴史にタラレバは無いと言われているが、この様なゴア氏が大統領になっていたら、どの様な政治が行われていたであろうか。未だこれからの可能性だってある。本当に興味深々である。

そのゴア氏が来週、再来日されると言う。どこかで又講演をするのであろう。是非直接話を聞きたいと思っているが、テレビ講演もあるのではなかろうか。 楽しみである。

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