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Eisen's Corner
コラム編
「最新冷凍技術事情/臨機応変
2008.1.17


昨年は、
世相を表す漢字として」が選ばれた(日本漢字能力検定協会)様に、多くの食品の偽装問題があった。赤福問題では冷凍保存していた製品を解凍して出荷していたことや、売れ残り製品の再利用等が消費者を騙しているとして問題になった。但し、転用を含め、各種の企業努力は、消費者は内心は大方認めているのではなかろうか。三十数年、事実上問題を起こしていなかった事も理由となろう。

注意すべき事は、全ての企業に対し今回の様な姿勢で追及し、売れ残りを廃棄するとしたら、今度は勿体ない、物を大切にしないという事になる。物の最終価格は上がり、逆に消費者の利益にはならないのではなかろうか。この問題は多かれ少なかれ食品業界共通の問題を含んでいるので、ここで冷凍の最新技術を含めもう少し掘り下げてみたい。

最近は調理された物も、揚げ物を始めとして様々な物が冷凍で供給されている。家庭によっては子供の弁当のおかずに冷凍物がなければ非常に困ると言う向きもあろう。しかし、物によっては解凍された時、冷凍前と比較して品質がかなり違ってくる物もある。

マグロを例にとると、遠洋物は殆ど船上で急速冷凍される。このマグロが解凍される時にいわゆるドリップが出てしまい、これが冷凍マグロの品質をかなり下げている。同様なことは他の魚、肉、野菜等、生鮮食料品でも少なからず生じ、冷凍=低級のイメージの原因となっている。

水の分子が最も小さくなるのは4℃であり、それ以上又はそれ以下の温度だと膨張する。普通、食材を凍らせると、外側、細胞膜より凍り始め次に内部の水分が凍るが、この時の膨張で先に凍った細胞膜が破壊されてしまう。この結果、解凍時に細胞内の水分が流れ出ることになる。これがよれよれの解凍野菜や、マグロのドリップの原因である。従って保存や解凍ではなく、冷凍の最初の過程が問題なのである。

しかし温度を下げながら電子レンジの様な仕組みで水の分子を振動させ、細胞を凍らせる順序を制御し、細胞膜を破壊から守る冷凍技術が確立されてきた。今や漁師さんもその差が判らないと驚く位、冷凍ものの魚の品質を良く出来る様になって来ている。この結果、果物、野菜、肉、魚貝類等を、取れ立てと遜色ないレベルで冷凍し、1~2年以上の長期保存が出来る。(実現できていないのは生花や、命のある動物だけ。(注)参照)生鮮食料品の長期保存は、凶作や豊作による価格の変動を吸収出来、キャベツをトラクターで踏みつぶして価格の下落を抑える等は不要な時代になるのである。又、ケーキや料理等、完成品も冷凍出来るので、ハイレベルのレストランでさえ、サービスする時に温めるだけという方式が可能となる。ホテルの大宴会等では大幅なコスト削減も可能となる。ここまで行くと「味気ない」と思われる向きもあるとは思うが、家庭での料理の仕方も大きく変化し、料理の一大革命、冷凍物大歓迎となるかもしれない。コンビニ弁当でさえ売れ残りは実質ゼロ。製造・販売・物流体制も大幅に変化し、流通の一大革命が起きる。

又、この新技術は臓器保存を容易にする等、医療分野への応用も可能。現在は特許がらみの為、一部の業務用冷凍庫にしか実現されていないが、いずれは家電業界にも取り入れられ、世界的に一大ブームになるであろう。そうなれば我々の冷凍物に対する、ややワンランク下のイメージは完全に払拭されるのではなかろうか。実はその様な時代に水面下では既になりつつあり、広がりつつある。

その様な時代が来ると、現在の製造日と言う概念はもはや変えなければならないかもしれない。赤福型の、謹製と言う解凍日時が重要となるかもしれない。大切なのは常に最終消費者の視点で物事を考え、経営者の視点を織り交ぜながら、企業の特色を出して行かなければならないということ。そして常に正直であらねばならない事である。我々の判断基準も、技術の進歩・変化を踏まえ、それに対応しなければならない。又法規・法律は常に後追いであるが、行政もこの様な変化に対応し、古い法で縛る様な事があってはならない。ダーウインのいう様に肝心なのは絶え間なく変化に適応すること。即ち企業、消費者、行政の3者とも臨機応変であらねばならないと言うことである。

注:数年に渡る長期冷凍保存は現状の家庭用冷凍庫の温度(最低で約-20℃普通は-10℃位)では不十分で腐敗菌の活動を完全に抑えるには-70℃は必要とされている。
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